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子宮筋腫

好発年齢:40歳代に最も多く発見されるが、若年者も増加傾向にある。

未産婦に多い。

子宮筋腫でない患者さんと比較して子宮体癌(内膜癌)の発生頻度が高い。

全ての子宮筋腫が治療を必要としているわけではありません。
           
              
子宮筋腫の発生部位による分類

(1)子宮筋腫の発生する子宮の部位によって次の3種類を区別する。
体部筋腫 子宮体に発生するもので、子宮筋腫の大部分(95%)はこれに属します。子宮体とは子宮の上部2/3の膨大した部分をいいます。
頸部筋腫 子宮頸部に発生する子宮筋腫を頸部筋腫といいます。子宮頸部とは子宮の下部1/3の円柱状を呈する部分をいいます。

(2)子宮筋腫はつねに子宮筋層に発生し、抵抗の比較的少ない方向に向かって発育するものであるが、筋腫結節の存在する場所およびその発育の方向によって粘膜下筋腫、筋層内筋腫(壁内筋腫)および漿膜下筋腫の3種類に分類されます。



粘膜下筋腫

子宮内膜直下(子宮の内側)に発生し子宮内腔に向かって発育する。発生頻度は少ないですが、たとえ筋腫結節が小さくても過多月経や月経痛などの症状が強いことが多いです。

筋層内筋腫(壁内筋腫)
子宮壁筋層内(子宮壁の真ん中)に発生し、筋層内に発育して、子宮壁筋層の中に囲まれています。子宮筋腫中もっとも多い種類です。

漿膜下筋腫
子宮漿膜直下(子宮の外側)に発生した筋腫で、子宮の表面(漿膜面)に向かって発育する。たとえ筋腫が大きくても筋腫特有の症状は無いか、あるいはあったとしても軽い場合がほとんどです。

子宮頸部筋腫
左の丸い筋腫は子宮頸部に発生している子宮頸部筋腫ですが、このような例は少数です。上の3症例は全て子宮体部筋腫であり、大部分の筋腫は体部筋腫です。

筋腫分娩とは?
筋腫分娩とは粘膜下筋腫の特殊なタイプです。粘膜下筋腫が有茎性(茎を持って)に発育し、その茎が次第に延長し、ついには筋腫結節自体が子宮外、すなわち膣内や陰裂外まで脱出した状態を筋腫分娩と呼んでいます。

子宮筋腫の症状
筋腫結節の位置、大きさ、数などにより症状は異なります。しかし全く無症状のこともあります。もちろん、全ての子宮筋腫が治療を必要としているわけではありません。漿膜下筋腫の場合には治療の必要がないことが多いです。
1 過多月経
2 月経時疼痛(月経困難症)
3 不妊
4 下腹部の膨大、腫瘤の触知
5 隣接臓器への圧迫症状
6 疼痛

1 過多月経
不正出血 1,2,3は子宮筋腫の3主要症状です。過多月経(生理の出血量が多いこと)や月経痛は粘膜下筋腫の場合に強いことが多いです。生理量が多いことにより、結果的に慢性失血性の重症貧血になり、全身状態の悪化をきたす例もあります。また、筋腫が存在することにより子宮内腔の変形や卵管狭窄、あるいは子宮内膜の循環障害(血のめぐりが悪いこと)による着床不備をきたす場合もあり、不妊や流産の原因に成る場合もあります(特に粘膜下筋腫の場合)。

2 月経痛

3 不妊

4 腫瘤感 筋腫がある一定以上の大きさになると、下腹部が膨隆し、患者さん自身が「しこり」として触知可能になります。

5 圧迫症状 筋腫がある一定以上の大きさになると、子宮周辺臓器への圧迫症状が出現する場合もあります。膀胱の圧迫により頻尿、排尿痛を引き起こしたり、ときには尿閉の原因にもなります。また直腸などの腸管を圧迫すると便秘の原因にもなります。

6 疼痛 頻度は少ないですが、粘膜下筋腫の感染、子宮筋腫結節の循環障害による変性、有茎性漿膜下筋腫の茎捻転などの場合には激痛を呈する時もあります。有茎性漿膜下筋腫とは子宮漿膜面に茎を持った漿膜下筋腫で、この茎を軸として子宮筋腫自身がねじれることがあり、激しい痛みを伴います。

7 帯下 粘膜下筋腫のさいに帯下を認めることがあります。特に感染や壊死があると膿性あるいは血性帯下が増量し、疼痛を訴えたり発熱を見ることもあります。特に筋腫分娩の祭にはその可能性は高くなります。

8 全身症状 子宮出血が高度でしかも長期間におよぶと慢性貧血の原因となります。さらには動悸や息切れ、全身倦怠感などの全身症状を呈し、心臓に負担がかかることもあります。

            


子宮筋腫の診断法

1 内診
2 超音波検査
3 細胞診・組織診
4 CT・MRI
5 血液検査(貧血検査・腫瘍マーカーなど)
6 その他

1 内診
内診によってのみ得られる医療情報としては硬度(硬いか柔らかいか?)、圧痛(圧迫した時に痛みを感じるかどうか?)、可動性(腫瘍が移動可能かどうか、あるいは癒着しているかどうか?)が挙げられます。これらは内診によってのみ診断可能で、他の診断法では確認できません。典型的な子宮筋腫の場合には硬く、圧痛のない、可動性良好な腫瘤として触知されます。子宮内膜症などを合併している場合には、圧痛があったり、あるいは癒着のため可動性が悪かったりします。

2 超音波検査
超音波検査にて、子宮筋腫は特徴的な渦巻き状・斑紋状エコーで形成される境界鮮明な類円形腫瘍として確認されます。更に、単に子宮筋腫の診断をするだけでなく、子宮内膜との位置関係より粘膜下筋腫の診断をしたり、子宮内膜症の合併の有無を診断します。また卵巣腫瘍の合併や鑑別にも役立ちます。

3 細胞診・組織診
子宮筋腫と診断された患者さんは、子宮筋腫のない患者さんと比較すると、子宮体癌(内膜癌)の合併がしばしば見られるために、細胞診・組織診にて確定診断をしておかなければなりません。

4 CT・MRI
症状、内診所見、超音波検査にて子宮筋腫の診断はほぼ十分に診断されます。しかし、超音波検査とは異なりCT・MRIは腹部全体の断面像が描写されるために、極めて大きな腫瘍の診断などには非常に有効になります。

5 血液検査
特に貧血検査と腫瘍マーカーが重要です。過多月経が見られる場合には、結果的に重症貧血のこともあります。またCA125などの腫瘍マーカーは子宮内膜症を合併している場合や、卵巣癌の場合にも上昇します。

6 その他
その他の診断法としては子宮卵管造影、子宮鏡検査、腹腔鏡、DIP(排泄性腎盂尿管撮影法などがあげられますが、全て行わなければならないとは限りません。


           


子宮筋腫の治療法

手術療法  
根治手術
(1)腹式単純子宮全摘術

(2)膣式単純子宮全摘術

保存手術
子宮筋腫核出術

薬物療法
(1)LHRH agonist

(2)Danazol療法
(3)その他(貧血治療など)

子宮筋腫の治療方法は、症状と子宮筋腫の大きさ、子宮筋腫結節の位置などによって決定されます。子宮筋腫が認められても全てが治療対象になるとは限りません。むしろ、治療を必要としない子宮筋腫のほうがはるかに多数です。また閉経後は筋腫結節が縮小するために年齢も治療の参考になります。


1 子宮筋腫の大きさが手拳大(握りこぶしの大きさ)以下でしかも無症状の場合

経過観察のみで積極的治療は行わない。

2 子宮筋腫の大きさが手拳大以下であるが筋腫特有の症状がある場合

薬物療法により症状の改善をはかり、必要に応じて腫瘍の縮小も試みる。しかし、症状の改善が認められなかったり、悪化する場合は手術を検討する。

3 子宮筋腫の大きさが手拳大以上の場合

症状の有無にかかわらず基本的には手術適応となる。しかし、全く無症状の場合には個々の症例で検討。

手術を行う場合には子宮全体を摘出する方法(腹式あるいは膣式単純子宮全摘術)と筋腫結節のみを摘出し子宮は残す方法(子宮筋腫核出術)があります。

筋腫結節のみを摘出し子宮は残す方法は未婚者やこれから分娩を予定しているなど子宮を温存する必要がある患者さんに適用されます。この場合には子宮が温存されるのが利点ですが、同時にある意味で短所にもなりかねます。
すなわち、子宮が残されるために、極めて小さな筋腫結節(たとえば大きさが1mm程度で子宮の奥深くに位置する場合)は技術的に摘出は不可能なことが多く、摘出されずに残ってしまう可能性も時にはあります。これが将来大きくなる可能性があります。従って必ず再発するとは限りませんが、再発の可能性は完全には否定出来ません。(ただし、再発するといっても1年や2年で再発するわけでなく、もっと長期的に考えた場合です。)
また子宮を残す必要性があったとしても、子宮筋腫核出術が全ての患者さんに可能とは限らず、時には不可能な例もあります。しかし、このような症例はごく少数です。当然、子宮全体を摘出する方法の場合には再発はありません。

また、膣式の手術は下腹部の手術痕がないために美容上好ましく、手術侵襲も少ないのが利点です。しかし、膣口から子宮を摘出する方法であるために、手術操作を行う場所が狭くなるために

(1)子宮筋腫があまり大きくなく、可動性良好である。

(2)経膣分娩の経験がある。

(3)下腹部の手術をしていない(手術の既往があると腹腔内に癒着があることがあるため)。という条件が満たされた患者さんのみに適応されます。


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